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【米国株】マリオット:持たない経営。見るべき指標はPLではない。

2021/04/11
 

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マネたびeee
40代の読書家 兼 エコノミスト。 普段、マネーに世界中をさせています。ブログでは、おカネ(投資)とホン(書評)とタビ(旅行)についてまとめていきたいと思います。

CFAの勉強に時間を割いているので、ブログの更新ペースを落としています。今回は、外部環境の影響を受けやすい宿泊業界において、外部環境に負けないマリオット・インターナショナル(MAR)の企業内容・業績を分析しました。分析には、Annual Report、10-K、Docohを中心に使っています。

マリオット・インターナショナル(MAR)概要

まず、マリオット・インターナショナル(MAR)の概要、採用インデックス、日本のオンライン証券会社での取り扱い状況は、それぞれ以下のとおりです。

セクター、業界はDocohを参照しています。

概要

採用インデックス

マリオット・インターナショナル(MAR)は、NASDAQ100とS&P500にそれぞれ組み込まれています。

NASDAQ100 S&P500

取扱証券会社

SBI、マネックス、楽天の大手オンライン証券会社いずれも、マリオット・インターナショナル(MAR)を取り扱っています。

SBI マネックス 楽天

 

マリオット・インターナショナル(MAR)の沿革と事業内容

マリオット・インターナショナル(MAR)は最初からホテル業を展開していたわけではなく、1927年にJ.Willard Marriottとその妻がA&W root beerのフランチャイズ店をオープンしたところから始まります。その後、Hot Shoppesというレストランをアメリカ東海岸に開き、ドライブインレストランの形態でも事業を展開しました。

1937年には、航空会社の機内食サービス(ケータリング事業)を手掛け、1953年にHot Shoppesは上場しました。

事業を始めてから26年間の間、ホテルの「ホ」の字も出てきませんが、1957年に事業方針を変更し、ホテル業に舵を切りました。最初は、モーターホテル(モーテル)として展開していました。1969年には初の米国外のホテルをメキシコ(アカプルコ)にて開業し、1972年には、クルーズラインにも乗り出しました。

1972年にCEOは創業者からJrに引き継がれ、1983年に、ビジネス旅行客向けのホテルとして、Courtyardを開業、1984年には、創業者の名前をとってJW MarriottをワシントンDCに開業しました。

1986年以降は、ブランドの取得を通じた事業展開をしていきます。1995年には、リッツカールトンの持分の49%を取得するなどしています。2000年代に入ると、ブルガリホテル(2004年)やオートグラフコレクション(2009年)などの高級路線を開拓するだけでなく、2013年に3つ星ホテルのモクシーを展開するなど、利用客のニーズにあわせたブランドを展開し、ラグジュアリー:6、プレミアム:11、セレクト:8、長期ステイ:5の計30ブランドで事業を展開しています。個人的な大きなイベントとしては、2016年のスターウッドの買収です。ウェスティンの利用で貯まっていたポイントが、マリオットによる買収で改悪になるのではないかと、抵抗感がありました。(笑)

マリオット・インターナショナル(MAR)が抱えるリスク

2020年12月期の10-Kによると、マリオット・インターナショナル(MAR)が抱えるリスクは以下のとおりです。

COVID-19に起因するリスク

マリオットのビジネス・財務状況に現時点において重大な影響を及ぼしており、今後も継続し、さらに悪化する可能性があります。

業界に関連するリスク

競争が激しい業界であり、他のホテルやシェアリングエコノミー、レンタルサービスとの間で顧客獲得競争が行われています。また、景気後退、その他の地政学的な影響によって、マリオットの業績・成長に影響を与える可能性があります。

事業に関連するリスク

運営上のリスク
  • 予期せぬタイミングでフランチャイズ契約が終了
  • フランチャイズオーナーとの意見の相違などによる訴訟への発展や計画の遅れの可能性
  • オンライン予約にあたって、自社以外の予約プラットフォームの利用の増加。
  • オーナーやフランチャイジーとの契約に依存しており、競合他社が提示する条件によって、自社に不利な契約内容になる可能性
  • 米国以外における事業展開に伴うリスク、レピュテーション低下の可能性
  • 米国以外における事業活動が腐敗防止法や貿易制裁に準拠していない場合のコスト増・レピュテーション低下の可能性
  • 為替レートの変動
  • ブランドの品質と評判の低下が市場シェア・レピュテーションに悪影響を及ぼす可能性
  • フランチャイジー、ライセンシーらの行動が自社のイメージ・評判に悪影響を及ぼす可能性
  • ストライキによる業務停滞
  • 上級管理職・優秀な人材の退職
  • 自然災害・人為的災害
  • 保険でカバーしきれない損失の可能性
  • 無形資産(ブランドや営業権など)の減損による多額の非現金支出の計上
開発・資金調達リスク
  • オーナー・フランチャイジーはホテルの購入・開発・改善のための資本を必要とするものの、必要な時に必要な額の資本を調達できない可能性
  • 不動産投資関連のリスク
  • リノベーションによる関連コスト、完成・再販リスク
  • 宿泊施設に関連した住宅の開発・販売
  • 開発中ホテルプロジェクトのキャンセル・遅延
  • 融資・保証に付随するリスク
  • ホテル担保ローンの返済・借り換えができない可能性
技術・情報保護、プライバシーに関するリスク
  • 予約システムの障害
  • 技術開発の遅れ
  • データ保護
  • 情報漏洩
  • サイバーセキュリティ―事件
  • 個人情報保護法、データセキュリティー法の変更に伴う費用の増加
ガバナンスに関するリスク
  • 買収防止の抑止策として、買収防衛条項の導入

マリオット・インターナショナル(MAR)の財務分析

次に、マリオット・インターナショナル(MAR)の財務データを見てみます。

マリオット・インターナショナル(MAR)のPL分析

データを取得できた2000年度以降を見ると、売上は上昇基調でしたが、COVID-19の影響は宿泊業界に大きく影響を及ぼし、結果として、2020年度の売上は惨憺たるものでした。なお、後述しますが、マリオット・インターナショナル(MAR)の業績を見ようとする際、単純にPLだけを追うと、方向・判断を見誤る可能性があります。

売上推移(内訳)

マリオット・インターナショナル(MAR)の売上は”Net fee revenue”, “Cost Reimbursement Revenue”, “Owned, leased and other revenue”, “Time share and service”から構成されています。

マリオット・インターナショナル(MAR)のビジネスモデルを理解するうえで最も重要な”Cost Reimbursement Revenue”を説明する前に、“Net fee revenue”から説明します。”Net fee revenue”はBase management fee(基本管理報酬), Incentive management fee(インセンティブ管理報酬), Franchise fee(フランチャイズ報酬)から構成されています。マリオット・インターナショナル(MAR)は、ホテルをすべて自社で所有しているわけではなく、マリオット、リッツカールトンといったブランドを使いたいホテルオーナーに対して、マリオットのホテル運営ノウハウ使用の対価として、またブランド使用の対価として、ホテル運営の収益の一定割合を基本管理報酬として、また、ホテルの収益性に応じてインセンティブを受け取っています。なお、コロナ禍の影響を受けた2020年度のインセンティブフィー(87mil USD)は、前年度(637mil USD)から8割強も減少しています。

Franchise feeはフランチャイジーがマリオットのブランドを使ってホテルをフランチャイズで運営する際に、ホテル運営収益の一定割合をロイヤルティで受け取ります。マリオットが資産としてホテルを持たなくても、ホテルオーナーやフランチャイジーが頑張ってくれれば、その売上に応じて一定割合が毎月チャリンチャリンと落ちる仕組みとなっています。

次に、”Cost Reimbursement Revenue”についてですが、マリオット・インターナショナル(MAR)はマネジメント契約やフランチャイズ契約に基づいて、マーケティング、セールス、予約、保険などのプログラムやサービスをホテルのオーナーやフランチャイジーにマークアップなしで提供しています。つまり、要した費用をそのままオーナーやフランチャイジーに請求しています。したがって、期ズレの影響がある場合、完全に一致するとは限りませんが、費用と収入に同額が計上されていると見て間違いありません。売上にはCost Reimbursement Revenueとして、費用にはReimbursed Expensesとしてほぼ同額が計上されています。同額が計上されているが故に、売上・費用のボリューム増につながっているため、費用よりもPLの下に位置する営業利益や当期純利益を使って利益率を基に競合他社分析をしようとしても意味はありません。趨勢分析なら、意味はあるかもしれません。

“Owned, leased and other revenue”には、自社で所有・リースしているホテル物件からの売上(宿泊、宴会など)が含まれます。下の図では、オレンジ色に該当しますが、毎年一定程度で推移しており、かつ僅少です。売上の多くは他のホテルオーナーやフランチャイジーからもたらされるフィーによるところが大きいです。ロイヤルティーやフランチャイズフィー、管理手数料といったものは、自らが汗をかく(費用をかける)ことなく、お金が湯水の如く入ってくるといっても言い過ぎではない性質のものですので、キャッシュフロー計算書を見るべきです。

RevPAR推移

RevPARとはRevenue Per Available Roomの略で、利用可能・販売可能な客室1室あたりの売上を表す指標のことで、客室料金を稼働率(Occupancy)で除すことで算出できます。客室単価がいくら高くても稼働率が低くては不健全ですし、客を呼び込もうと客室単価が破格であっても稼働率は100%を超えることはありません。ホテル業の健全性を見るうえで、最も使われている指標です。RevPARは130ドル前後で推移していましたが、2020年度の落ち込みは、リーマンのときを下回る勢いでした。これは稼働率の落ち込みからくるものです。RevPARも重要ですが、稼働率が最も重要だと、私は考えています。

マリオット・インターナショナル(MAR)のBS分析

純資産と自己株式の推移をグラフにしましたが、自己株式取得に積極的、それ故に、毎年、純資産が下方に押し下げられているのが一目でわかります。結果として、見かけ上、純資産は小さいように見て取れますが、資本準備金や利益剰余金が小さいからではなく、単純に多額の自己株式が計上されているところが大きいです。

Goodwillは総資産の10%程度で推移していましたが、スターウッドの買収を通じて、ウェスティンやシェラトンなどのブランドを取得した際に計上されたものです。引き続き、買収を通じてホテルブランドを増やす限り、Goodwillは増加傾向にあると思います。肝心の減損ですが、これまで減損したことはありません。9,000mil USD(約1兆円)がB/Sに載っているので、一気にドカンと減損を認識するようなことがあったら利益剰余金(9,206mil USD)をほぼすべて吹き飛ばしてしまうレベルです。

なお、現金の割合は総資産の1-3%程度で推移しています。スターウッド傘下のブランド取得時期、マクロ環境の変化の際は、現金を厚く持っている傾向を伺い知ることができます。現金の使途を考えつつ、有事に備えた対応が取れていると思います。

客室増えても、資産は増えず

客室数は年々増えており、客室数は、2016年のウェスティンをはじめとするスターウッド買収時に一気に増え、それにあわせて無形資産(ブランド・のれん)は増加しました。ただ、客室数は増えても有形固定資産は増えていないのです。スターウッドの買収は、ウェスティンなどのブランド・権利のみの取得で、ホテルといったモノを取得せず、運営はホテルオーナーに任せていたというスタンスかと思います

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マリオット・インターナショナル(MAR)のCF分析

事業拡大に伴って総量は増えているものの、純現金増減(赤色の折れ線グラフ)は微々たるものですので、余計なキャッシュを手元に置かない姿勢を見て取れます。スターウッド取得のイベントは、2016年の投資活動によるキャッシュフロー(オレンジ色の棒グラフがマイナス)にしっかりと表れていますね。

純利益vs営業CF

営業CFは必ず純利益を上回っていなければならないという鉄則がありますが、マリオット・インターナショナル(MAR)は営業CFの方が純利益よりも大きいので、粉飾の可能性は極めて低いと考えられます。また、リーマンショック、コロナの時に、税引後当期純損失を計上しつつも、営業CFはしっかりとプラスを上げているので、利益の質が高いように見てとれます。

営業CFマージンの推移

MaketHack流 世界一わかりやすい米国式投資法の技法”によると営業CFマージンは15%~35%が理想ですが、マリオット・インターナショナル(MAR)の営業CFマージンは10%前後で推移しています。直近のコロナ禍で過去最高水準の営業CFマージンを記録した背景として、売上が落ち込む中、営業活動によるキャッシュフローがあまり落ち込まなかったことが大きな要因であると考えられます。

利益指標

利益指標としてのROEとROA

積極的な自社株買いを続けていることもあり、形式上の純資産はマイナスであるため、ROAはプラスでもROEはがマイナスで推移していた時期もあります。また、純資産が少しプラスに振れただけで率は大きくプラスになったりするため、ROEは指標として機能しませんが、ROAは1桁後半程度で推移しています。

ROICの推移

ROEは、Eがマイナスだと機能しない指標ですので、ROICの推移を見ました。ROIC(Return on Invested Capital)とは、事業のために投じられた資本の効率性を測る指標であり、税引後営業利益÷長期有利子負債と純資産の期首期末平均で算出されます。2015年までは効率的に経営しているように見て取れますが、2016年以降は、スターウッドの買収の影響もあり、NOPAT(分子)は増加したものの、長期有利子負債(分母)は増加したことから、ROICは50%弱から10%台半ばに落ち込んでいます

マリオット・インターナショナル(MAR)の安全性分析

マリオット・インターナショナル(MAR)の格付推移

直近のマリオット・インターナショナル(MAR)の格付はBaa3/BBB-、投資適格のぎりぎりのところです。あと一段階ノッチダウンしたら投機的となり、投資方針・カテゴリーに合致しない機関投資家がごっそりと売りに出る水準です。

格付機関 長期発行体格付 見通し
Moody’s Baa3 Negative
S&P BBB- Negative
Fitch BBB- Negative

Moody’sのウェブサイトより、マリオット・インターナショナル(MAR)の格付推移を長期で見てみると、頻繁に格付は動いておらず安定的です。2008年のリーマンショックを受けて、一時的に格付が悪化していますが、その後、格付はBaa2に回復しました。今回は、2020年3月にBaa3にノッチダウンされました。リーマンショックの後のように素早くノッチアップできるかどうかがポイントでしょうか。

インタレストカバレッジレシオ

営業利益÷金融費用で算出したインタレストカバレッジレシオは4-10倍程度ありましたのでファイナンス面においては安心でしたが、2020年度はコロナ禍の影響を受けてマイナス圏に水没です。リーマンショック後のように、マイナス圏で推移することなく即座に回復すると思いたいです。

マリオット・インターナショナル(MAR)の配当性向推移

Dividend ÷ Net Incomeを配当性向として捉えると、20%-50%で推移しており、通常の環境下において減配・無配リスクは低いと考えられます。フリーキャッシュフロー(FCF)に対する配当金額の割合を配当性向として捉えるとブレ幅は大きく見えるものの、コロナ禍においても、FCFで捉えた配当性向はプラスを維持していることが見て取れます。

マリオット・インターナショナル(MAR)の配当利回り

マリオット・インターナショナル(MAR)は地道に増配を続けつつも、配当利回りは1%以下から1%半ば程度までに上がってきていました。(配当利回りは年度の1株あたり配当金額を事業年度末の株価で除して算出)。さすがに、コロナ禍の影響は避けられませんでしたが、2008年のリーマンショック時の落ち込みから回復したように、配当金額も近い将来、回復するのではないかと期待を込めて見ています。

S&P500との比較

直近5年間の株価の推移です。S&P500が95%上昇する状況において、マリオット・インターナショナル(MAR)の株価はS&P500を上回る120%の上昇です。S&P500を常に上回って推移していましたが、2020年度はコロナの影響を受けてS&P500を下回って推移してきたものの、2021年年明け頃からワクチン開発・接種ペースの状況を受けて、S&P500を上回って推移しつつあると見てとれます。ただ、鋭角な印象は否めず、ペースが急な気もしなくはないです。

まとめ

売上にはCost Reimbursement Revenueとして、費用にはReimbursed Expensesとしてほぼ同額が計上されており、同額が計上されているが故に、売上・費用のボリューム増につながっているため、費用よりもPLの下に位置する営業利益や当期純利益を使って利益率を基に競合他社分析をしようとしても意味はありません

定点観測する際は、ホテル業界特有の指標であるRevPARのほかに稼働率を把握の上、PPE(有形固定資産)の推移を押さえつつ、営業CFに意識を払うべきでしょうか。

綺麗なグラフであればあるほど、安心できる、先を読みやすい企業かと思いますが、マリオット・インターナショナル(MAR)はそうでもなかったです。

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40代の読書家 兼 エコノミスト。 普段、マネーに世界中をさせています。ブログでは、おカネ(投資)とホン(書評)とタビ(旅行)についてまとめていきたいと思います。

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