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【米国株】Home Depot:堅い経営、積極的な自社株買いで見かけは債務超過企業

2021/04/04
 

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40代の読書家 兼 エコノミスト。 普段、マネーに世界中をさせています。ブログでは、おカネ(投資)とホン(書評)とタビ(旅行)についてまとめていきたいと思います。「いいね」を押してくださったり、ツイートしてくださると励みになります。 よろしくお願いします。

気になる米国企業を個別に調べていきます。調べるにしてもアテもなく1社1社調べるのは非効率ですので、S&P500構成企業のうち、S&P500のインデックスを上回っている企業を対象に分析します。分析には、Annual Report、10-K、Docohを中心に使っています。

Home Depot概要

まず、Home Depotの概要、採用インデックス、日本のオンライン証券会社での取り扱い状況は、それぞれ以下のとおりです。

セクター、業界はDocohを参照しています。

概要

  • セクター:Retail Trade(小売り)
  • 業界:Home Centers(ホームセンター)
  • 本社所在地:ジョージア州アトランタ
  • 売上高: 110,225百万ドル/約12兆円(2020年1月期)
  • 営業利益率: 14.4%(2020年1月期)
  • 営業CFマージン: 12.4%(2020年1月期)
  • 配当性向
    • 配当÷当期純利益: 53.0%(2020年1月期)
    • 配当÷FCF:53.8%(2020年1月期)
  • 時価総額:291,565百万ドル/約30兆円(2021年1月29日時点)

(注:Home Depotの決算は1年ではなく52週ですので、毎年、決算日は変わります。2020年度については、2021年1月31日が決算日ですが、2019年度は2020年2月2日でした。ここでは、便宜的に1月末を事業年度末としています。)

採用インデックス

Home Depotは、1999年にダウ工業平均に、S&P500には1988年より組み込まれています。

ダウ工業平均 S&P500

取扱証券会社

SBI、マネックス、楽天の大手オンライン証券会社いずれも、Home Depotを取り扱っています。

SBI マネックス 楽天

 

Home Depotの沿革と事業内容

現在、売上高ベースで世界最大のホームセンター小売店であり、建材、ホームセンター製品、芝生やガーデン用品、装飾品などの幅広い品揃えを誇り、ホームセンターの設置サービスや工具・備品のレンタルなど、多くのサービスを提供しているHome Depotは、1978年にHandy Dan Home Improvement Centersを解雇されたBernie Marcus氏とArthur Blank氏が同年設立したところから始まります。

1979年に2店舗をアトランタにオープンし、同年末には3店舗目を出店。当時の従業員は200人、週次売上高は81,700ドル(2020年の物価に置き換えると、300,000ドルに相当)でした。1981年にNASDAQに上場後、フロリダなどに店舗展開します。その後、1989年に100店舗目の出店を果たすと、2005年までの16年間に1,900店舗を新規出店し2,000店舗に到達します。

新規出店のスピードは落ち、2020年1月期末時点における店舗数は2,291店舗(アメリカ:1,984、カナダ:182、メキシコ:125)ですが、後述するように、既存店売上高は毎年着実に伸びています。

この店舗に途切れることなく製品を納品している配送センターは200箇所以上配備され、その96%が賃貸契約です。一方で、店舗は9割が自社保有です。自社店舗だからこそ、顧客ニーズを満たすための店舗改装に取り組めるのではないかと思います。

なお、一言でまとめると、”日曜大工”ということもあり、売上は季節による影響を受けます。つまり、第2四半期(6-8月)の売上が最も大きく、第4四半期(11-1月)の売上が最も小さいです。

現在、Home Depotは2018年に掲げた110億ドル規模の投資計画を推進中です。具体的には、店舗、店員、デジタル、プロ顧客(プロのリフォーム業者/リフォーム業者、ゼネコン、なんでも屋、プロパティマネージャー、ビルサービス業者、施工業者などの専門業者)の顧客体験、サービス事業、サプライチェーンなどに使う予定です。

Home Depotが抱えるリスク

2020年1月期の10-Kによると、Home Depotが抱えるリスクは以下のとおりです。また、2021年1月期第3四半期の10-Qによると、COVID-19もリスク要因として追加されています。

  • 競争の激化が製品やサービスの価格・需要に悪影響を及ぼし、Home Depotの市場シェアを低下させる可能性があります。
  • 消費者のニーズ、期待、トレンドをタイムリーに把握したり、効果的に対応できない可能性があり、その結果、顧客との関係、評判、製品やサービスに対する需要、市場シェアに悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 店舗、ネットとリアルの融合、サプライチェーン、テクノロジーに関する取り組みから期待した効果が得られなかったり、失敗したりする可能性があります。
  • Home Depotのビジネスの成否は、人件費を管理しつつ、優秀な社員を惹きつけ、育成し、リテンションする能力にかかっています。
  • 主要なITシステムやプロセスに障害が発生した場合、Home Depotの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 顧客向けシステム障害は、小売戦略を損なう可能性があり、顧客に悪影響を与える可能性があります。
  • サプライチェーンの混乱や、商品の流通に影響を与えるその他の要因により、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 顧客、関係者、サプライヤー、Home Depotのプライバシーと安全性の維持ができなければ、多額の損失発生、風評被害を被る可能性があり、訴訟等に発展する可能性があります。
  • 事業コストの増加、不正行為の可能性のある支払関連のリスクに晒されており、窃盗、潜在的な責任の対象となりえ、これらリスクは、事業を混乱させる可能性があります。
  • 住宅市場、経済状況、政治情勢、公衆衛生問題、その他の自社でコントロールできない要因に関する不確実性は、製品やサービスに対する需要、事業コスト、及び財務に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • Home Depotの事業は、季節的な影響や、異常気象や重大な気象条件の影響を受け、自然災害やその他の壊滅的な事象が単独で発生、あるいは併発した場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。
  • 十分な数の信頼たりうるサプライヤーとの関係構築に失敗した場合、またはサプライヤーが財務上の問題やその他の問題に直面した場合、Home Depotはタイムリーかつ効率的に、高い品質基準を満たす製品を顧客に提供できず、事業に影響を及ぼす可能性があります。
  • Home Depotが他社製品と独自製品の両方のサプライヤーとの提携や関係を効果的に管理・拡大できない場合、競合他社との差別化戦略を効果的に実行できない可能性があります。
  • 製品及びサービスの高い品質と安全性を達成し、維持できない場合、顧客とのイメージの悪化や訴訟リスクに曝され、売上高と経営成績に悪影響を与えます。
  • Home Depot独自製品は、規制、製造物責任、製造物責任、風評被害など、特定のリスクを増大させる可能性があり、施工サービス事業を効果的に管理できない場合、売上高の減少、罰金、訴訟、風評被害、またはゼネコン免許の喪失などの影響を受ける可能性があります。
  • 戦略的取引にはリスクが伴い、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があり、これらの取引から期待した効果が得られない可能性があります。
  • 連邦レベル、州レベル、または地方レベルの新しい法律や規制の採用、変更、施行拡大の結果として、事業活動にかかるコストが増大する可能性があります。
  • 海外市場から提起される独自の課題にうまく対処できない場合、Home Depotの海外事業が成功しない可能性があり、売上高及び収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • コモディティ価格のインフレやデフレは、価格、製品の需要、売上高、利益率に影響を与える可能性があります。
  • また、保険でカバーされていない財物、損害、その他の損失が発生する可能性があります。
  • 会計基準の変更、複雑な会計事項に関連する経営者の主観的な仮定、見積り、判断は、業績や財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
  • 多くの法的、規制的、政府による強制執行手続きに関与しており、それらの手続きやその他の偶発事象の結果を確実に予測することはできませんが、これらの結果として、事業に悪影響を及ぼしたり、コストが増加したりする可能性があります。

Home Depotの財務分析

次に、Home Depotの財務データを見てみます。

Home DepotのPL分析

データを取得できた2009年度以降を見ると、売上は上昇基調であるほかに、営業利益率も上昇基調にあり、直近は15%弱で推移しています。

販売チャネル別売上高推移

Home Depotはオンライン販売(店舗受取のネット注文含む)も取り組んでおり、売上全体に占めるオンライン経由の売上の割合は年々増加しており、2021年1月期はコロナ禍の影響もあり、オンライン経由の売上割合がさらに上昇しています。

既存店売上高推移

なお、Home Depotはオンライン経由の販売に力を入れているのはもちろんのこと、既存店売上高もしっかりと伸ばしています。既存店売上高の対前年比は約5%で推移しています。日本における小売業は多店舗展開で総量を重視して、質を落とす(利益率を落とす)傾向がありますが、Home Depotは既存店売上高を着実に伸ばしていることが利益の源泉と呼べるのかもしれません。

Home DepotのBS分析

純資産と自己株式の推移をグラフにしましたが、自己株式取得に積極的、それ故に、毎年、純資産が下方に押し下げられているのが一目でわかります。結果として、見かけ上、若干の債務超過ですが、この差は、自己株式と同じくらいの利益剰余金によるところが大きいです。

のれん(Goodwill)は総資産の5%程度を占めています。のれん判定を通じて減損を認識する際のPLへのインパクトは軽微と考えられます。また、2000年代は、80億ドル規模の買収をしていましたが、最近は、M&Aによる事業拡大には消極的な姿勢が見て取れます。

なお、現金の割合は総資産の5%前後で推移しています。グラフには載せていませんが、2020年度第3四半期時点において、現金の比率は2割強まで増えていますので、現金の使途を考えつつも、有事に備えた対応が取れていると思います。

Home DepotのCF分析

事業拡大に伴って総量は増えていますが、純現金増減は微々たるものですので、余計なキャッシュを手元に置かない姿勢を見て取れます。

純利益vs営業CF

営業CFは必ず純利益を上回っていなければならないという鉄則がありますが、Home Depotは営業CFの方が純利益よりも大きいので、粉飾の可能性は極めて低いと考えられます

営業CFマージンの推移

MaketHack流 世界一わかりやすい米国式投資法の技法”によると営業CFマージンは15%~35%が理想ですが、Home Depotの営業CFマージンは10%強で推移しています。

利益指標

利益指標としてのROEとROA
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積極的な自社株買いを続けていることもあり、形式上の純資産はマイナス、債務超過の状況にあるためROEは指標として機能しませんが、ROAは20%前後で推移しています。

ROICの推移

Home DepotのIRのウェブサイトでもアピールされていますが、Home Depotは売上高、営業利益率のほかに、ROICを指標として重要視しています。ROIC(Return on Invested Capita)とは、事業のために投じられた資本の効率性を測る指標であり、税引後営業利益÷長期有利子負債と純資産の期首期末平均で算出されます。

Home Depotの安全性分析

Home Depotの格付推移

直近のHome Depotの格付はA/A2、すなわち投資適格の水準です。

格付機関 長期発行体格付 見通し
Moody’s A2 Stable
S&P A Stable
Fitch A Stable

Moody’sのウェブサイトより、Home Depotの格付推移を長期で見てみると、頻繁に格付は動いておらず安定的です。2008年のリーマンショックを受けて、一時的に格付が悪化していますが、その後、格付が幾度もポジティブに見直されています。

インタレストカバレッジレシオ

営業利益÷金融費用で算出したインタレストカバレッジレシオは10倍強程度あるので、ファイナンス面においては安心です。即座に何かあったとしても、次の手を打つだけの時間は十分に残されていると思います。

Home Depotの配当性向推移

Dividend ÷ Net Incomeを配当性向として捉えると、50%前後で推移しており、減配・無配リスクは低いと考えられます。フリーキャッシュフロー(FCF)に対する配当金額の割合を配当性向として捉えても、同様に低い傾向にあることが見て取れます。この推移が続く限りにおいて、減配・無配リスクは低いと考えられます。ただ、直近は、右上がりの傾向にあるものの、100%を大幅に下回っている状況ですので、即座に減配・無配になるとは考えにくいです。コロナ禍の2021年1月期においても増配していますし。

Home Depotの配当利回り

Home Depotは増配を毎年続けており、配当利回りは2%強(年度の1株あたり配当金額を事業年度末の株価で除して算出)で推移しています。

S&P500との比較

直近5年間の株価の推移です。S&P500が95%上昇する状況において、Home Depotの株価はS&P500を上回る115%の上昇です。5年前はS&P500と比較して見劣りしていましたが、近年は、常にS&P500を上回り、コロナ禍においても、引き続き、S&P500を上回りつつ、かつ、回復の立ち上がりが速い印象を受けます。

まとめ

配当性向が低いことから減配リスク・無配リスクは低いと考えられるので、ファイナンス面においては、枕を高くして寝られる水準でしょう。継続的・積極的な自社株買いを通じて、形式上は債務超過ですが、CFが堅調ですので、形式的債務超過を特に気にすることはないでしょう。

ビジネス面において、既存店売上高が、これでもかというくらい毎年増加していますので、この状況が続く限り安心できると思います。

Home Depotを見る際は、ROICと既存店売上高、オンライン売上高比率、この3つを押さえておけばいいのではないかと考えます。

個人的には、緑化業界向け事業者に強いSiteOne Landscape Supply(時価総額:約70億ドル)を買収したら、園芸というカテゴリーから全米を網羅できるし、SiteOne Landscape Supplyの強みである配送網を活かせるし、面白いかな?と思います。買収に動き出すとしたら、大量に保有している自社株(約650億ドル)をガツンと使うのかな?と妄想。

綺麗なグラフであればあるほど、安心できる、先を読みやすい企業なのかなと思います。

参考

SiteOne Landscape Supplyに関する記事はこちらから

【投資】ひふみワールドの保有銘柄をヒントにする

 

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