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【書評】証券分析【1934年版第1版】第6章~第7章

2024/12/04
 

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40代の読書家 兼 エコノミスト。 普段、マネーに世界中をさせています。ブログでは、おカネ(投資)とホン(書評)とタビ(旅行)についてまとめていきたいと思います。「いいね」を押してくださったり、ツイートしてくださると励みになります。 よろしくお願いします。

ベンジャミン・グレアムとデビッド・ドッドによるバリュー投資のバイブルともいえる証券分析【1934年版第1版】を紹介します。全52章から構成される大作のため、後々見返すことを念頭に、書評というよりもむしろ各章の要約的な位置づけとして複数回に分けてまとめます

要約・備忘録としての位置づけが近い、このブログシリーズの自分ルールについては、別記事でまとめました。

前回の記事では第4章と第5章について触れましたが、今回は、

  • 第6章 確定利付き証券の選択
  • 第7章 確定利付き証券の選択(続)

をまとめます。

第6章 確定利付き証券の選択

この章では、いわゆる社債を選択する際の原則について、説明されています。債券についてわかりやすく上梓されている書籍は少ない印象で、むしろ、多くの証券が自社のウェブサイトや新聞の広告欄で、トルコリラ建てXXXX債の金利XX%など、高金利を謳って、多くの個人投資家のキャッシュを吸い上げている印象です。しっかりと、知識を身に着けて、少なくとも自分が負担するリスクを認識したうえで債券を購入したほうが良いです。

「優先株と債券の投資法をひとまとめにすることは決して適切では」ありません、というのも、「優先株の多くは継続的な配当の支払いという点では十分に保証されていない」からです。

「正しい債券選択の基本は将来の利益のチャンスを放棄する見返りに明確な形で現在の安全性というものを確保することにある」と言えます。この点に立つと、優先株の配当が明確な形で現在の安全性を確保しているかどうか疑問です。

損失回避

債券投資の大きな目的が損失を避けながら、一定のリターンを確保するということにあるとするならば、債券投資は主に消極的なプロセス」といえます。この点を現在の社債投資に当てはめてみると、証券会社のウェブサイトでは高金利を謳う高金利通貨国の外債(例:トルコリラ建て債券)が目立ち、一般投資家には多くの債券の中からそもそも選択する権利が与えられていない、証券会社が売りさばきたいものだけがお膳立てされているという見方もできるのではないでしょうか?

「ある銘柄を買いそびれたことの代償は間違った銘柄に投資したことの代償と同じくらいに大きい」のですが、ハイリスクの債券を購入しなければ、「実質的には何の代償を払う必要は」ありません。

証券選択における4つの原則

確定利付き証券を検討するにあたって、4つの原則があります。

  1. 「その証券の安全性は、・・・発行会社の財務能力によって決まる」
  2. 「そうした能力は、・・・不況期で明らかになる」
  3. 「・・・低い安全性は表面利率をどれほど高くしても補うことはできない」
  4. 「・・・「消去法」の原則に従うとともに、発行会社の定款に記載された条項については厳しい基準を適用すべきである」

4つの原則について、それぞれ詳しく見ていきます。なお、第四の原則については、次回触れます。

第一の原則ー証券の安全性は発行会社の財務能力で決まる

「最も重視すべきであるのは債務者であるその発行会社の財務力と支払い能力である。ここが従来の考え方と大きく違う点である。債券はその企業の資産に対する請求権であると同時に、その企業価値に対する請求権でもある。」

社債権者として、財産請求権を行使しようとしても、資産差し押さえ・処分・換価という手続きは非現実的なアプローチです。というのも、「①企業が倒産すればその資産価値も下落する、②債券保有者の本来の法的権利を主張するのは難しい、③破産管財の下では残余資産の処分の遅れやその他の不都合が生じる」からです。

「一般にその企業の担保資産の価値はその収益力によって決ま」ります。その企業のビジネスと切り離して特定の資産(例えば、鉄道業であればレール)に対して担保を設定していたとしても、レールそれ自体は債権者にとっては何も意味も持ちません。鉄道会社が使うことで初めて価値を生み出します。

つまり、「もしもその企業が倒産という事態になれば、その固定資産の換金可能な価値は大幅に下落する。こうした理由から、その企業の担保資産の取得原価や評価額をその証券の購入基準と考えるのは完全に間違って」います。

資産を換価することは難しいですし、差し押さえ対象の資産の価値が社債権者の債券金額よりも大きい場合、裁判所は差し押さえも、担保権行使も認めないので、「資産価値が債券保有者の請求額をかなり下回っていないかぎり、債券保有者が担保資産を実際に手に入れることはほとんど不可能」です。

また、「担保資産を債券投資の安全基準とする考え方のもうひとつの間違いは長い待ち時間」にあります。多くの利害関係者がいる中で、自分だけ優先的に取り扱ってもらおうという虫のいいことはありえず、関係者との利害調整に時間がかかります。

債券投資の基本原則は、「債券購入に際して重要なことはトラブルを避けることであり、トラブルが起こってからわが身を守ること」ではありません。

また、「その企業が破産管財となればその証券は大幅に下落するのが普通であり、投資家がその証券の信託証書の誓約条項に訴えざるを得ないというその事実そのものが、その投資は失敗または賢明ではなかったことを何よりも雄弁に物語っている。担保資産がそうした投資家に与える保護とは、そうした間違った投資をした自分を慰める気休め程度のものでしかないのである。」

先取特権はそれほど重要ではない

債券にあって株式にない権利。それはデフォルトした企業から優先的に弁済を受け取ることができる権利ではないでしょうか。デフォルトした企業からすべての債権者に債務が支払われたのちに株主に残余財産が分配される。ほんとうに、残余財産が分配されると思っていますか?そもそも残余財産が残されていると思いますか?その前に支弁を受ける債権者においても、優先的にすべての弁済を受け取ることができると思っていますか?

こういう視点に立つと、「優良債券の選択に際して先取特権がそれほど大きな重要性を持」ちません。

先取特権とか担保の有無とか些細な点にこだわるのではなく、購入対象をブルーチップ銘柄など優良企業の社債に目を向けるべきです。「担保付き社債を発行していない企業の無担保社債は平均的な担保付社債とほぼ同じ信用格付けランクにある・・・そうした企業は高い信用を得ているために、無担保の長期債でも十分に必要な資金を調達できる」

担保がついているから安心というわけではない点を踏まえると、担保の有無に拘らず、優良企業を対象に絞り込むべきです。

安全な企業の高利回り債を買う

安全か安全ではないかは、債券の弁済順位ではありません。したがって、「その企業の下位債券が安全でなければ、その一番抵当付き社債も確定利付き証券には値し」ません。この考え方に立つと、そもそも、「ぜい弱な企業の優良債券は存在しない」と言えます。

正攻法の債券投資アプローチは、「まず安全性と財務内容のあらゆる基準を満たす企業を選び、次にその一番抵当付き社債よりも下位にある高利回りの債券を購入すること」です。

つまり、デフォルトに陥ったら、元本が戻ってくることはないと腹を括り、優良企業を対象にデフォルト時の弁済順位が劣後する高利回り債券を対象に投資するアプローチです。「倒産という事態に直面すれば、その一番抵当付き社債も無担保社債と同じくらいに大幅に下落するのは明らか」ですし。

下位債券に大きなメリットがない場合には上位債券を選択する

非常にわかりやすい原則だと思います。ただ、「下位債券を選ぶのは、大きなリターンというメリットがあるときだけ」です。微々たる差だったら、上位債券を選びます。ここでいう、上位・下位とは、例えば同じ会社の債券を意図しているのであって、A社の上位債券とB社の下位債券を比較していません。

第7章 確定利付き証券の選択(続)

第二の原則ー債券は不況期に購入する

「ある会社の業績が悪化したにもかかわらずその債券が相応の価格を維持しているのは・・・単にその会社が不況に強そうなのでその債券を購入しているというまったく単純な面もあ」ります。そういった需給の関係から買い支えられている債券がある中において、債券を選択するには、「不況に耐え得る企業とぜい弱な企業を区別するのではなく、その債券が大幅に下落するのか、それとも軽微な落ち込みで済むのかといった観点からその発行会社を見るべき」です。というのも、不況はすべての企業に影響を与えるので、企業の体力よりもむしろ、不況に強そうという単純な理由に従うのも手です。

電力・ガスといったインフラ系の「公益事業会社が軒並み経営難に陥ったのは電力産業などが持つ本来的な弱さによるものではなく、その資金調達の無謀なやり方が原因」とされるように、産業的に安定している企業も流動性リスク・リファイナンスリスクなどをどのように管理しているかによって、不況期の金利負担が違ってきます。

不況期に債券を購入する際も、いつも以上に厳しい基準を設けて銘柄選定をすべきであって、「過去の経験から未来の手掛かりをくみ取るためにも、われわれは不況期に鉄道債を購入するときには平常時以上の安全余裕率を取るよう肝に銘じるべきで」す。

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また、投資対象も大企業から中小企業いろいろとある中で、「「会社」の規模は工業産業が深刻な不況に陥っても好業績を維持できる重要な条件であり、この基準に照らせば工業債への投資は大手企業の債券に限定すべき」です。

不況期はいつも以上に選定基準を絞るとして、その結果として該当する銘柄がなかったとしても、「投資適格な価格でリスクの大きい債券を購入することはけっして賢明ではないだろう、つまり、優良な債券がないという理由から劣後債を購入してはならない。・・・投資家は利回りを多少犠牲にしても、自らの厳しい基準に合致した証券だけを選択すべきであり」、選定基準を妥協することは認められません。損失を回避しつつ一定のリターンを上げることを目標とする限り、債券投資を通じて、不要のリスクを取る必要はありません。

「安全性を犠牲にして高い利回りを得ようということは結果的に何の利益にもな」りません。これは、証券会社が案内している高金利通貨建て債券(例:トルコリラ建て債券)にも言えます。トルコリラ相場の先行き不透明というハイリスクを負ってまで、高い利回りを得ることは得策でしょうか?

恐いことばかり言っていますが、「企業がそうした資金の借り入れをどのような状況の下でも安全に返済できる水準に抑えていれば、それはその企業と投資家の双方にとっても望ましい」ため、銘柄選定眼はとても重要です。しっかりと銘柄選定眼を養っていれば、「安全な資金調達という観点から見ると、債券を発行する経営基盤のしっかりした企業とそれを購入する投資家の間に基本的な利害の対立などは存在し」ません。

繰り返しになりますが、「投資家としては優良な債券がないからといって二流会社の債券を購入すべきではなく、自らの投資基準に見合った適当な債券が入手できなければ債券投資そのものを手控えたほうがよい」です。

「投資家は工業債の購入に際しては、①会社の規模、②支払利息を十分に賄えるほどの収益力-という2つの基準を厳しく適用して、さまざまなリスクからわが身を守るべきである」

第三の原則ー利回りのために元本の安全性を犠牲にしてはならない

「証券の価格と利回りは予想リスクの正確な数学的計算によって決まるのではなく、その証券の「人気」に大きく左右される」ため、「証券の投資リスクを保険数理に基づく机上の計算で求めるのは理論的にも、また実際上もまったく無意味」です。また、「一般投資家は保険会社ではないため、年に一定のプレミアムを支払って利回りを高める代わりに元本を失うというリスクは取るべきでは」ありません。

そもそも、「一般投資家がそうした保険会社のやり方にならって利益を出すことはできない。債券投資家は経済的にもまた心理的にも、不確実に起きる大きな損失を埋め合わせるための定期的な準備金の積み立てなどできないからである」。ざっくり解釈すると、個人のちっぽけなマネーで個別に債券投資をするな!ということでしょうか。

「元本損失のリスクは単なる高利回りを補うのではなく、むしろ元本の値上がりのチャンスで埋め合わせるべき」であり、元本損失のリスクを高利回りあるいは元本の値上がりで補うことに「大きな「数字上の」違いはないかもしれないが、その「心理的な」違いは極めて大きい」です。高利回りというのは、リスクの裏返しですし、ハイリスクを取るだけの覚悟があなたにありますか?

高利回り債を額面近くで購入するのは決して得策ではない」です。

最低基準から出発

債券投資の銘柄選定に妥協は禁物です。「最上位の基準から出発し、まず最大の安全性を確保するために最低利回りの債券を調べ、次に最も魅力的なインカムゲインを持つ理想的な債券からどれだけ譲歩するのかを計算する」ことから始めれば、「高利回りという魅力や債券セールスマンの甘言に乗ってリスクの大きい債券に手を出すようなこともなくなるだろう」

「最低基準を満たさない債券は、たとえそれが高利回り、発行会社の好業績予想またはその他の好材料があってもインカムゲインを目的とする投資対象としてはすべて除外すべき」です。「投資家としては一般的な基準よりははるかに厳しい安全基準を採用すべきであり、いずれの場合でも利回りが幾分犠牲になるのは仕方がない」です。

明確な最低基準の出発点から上方にランクを上げていくことで投資対象を絞っていったほうがよい」です。

楽天から購入される場合はこちらから。

 

参考

ひとつ前の記事はこちらから

【書評】証券分析【1934年版第1版】第4章~第5章

次の記事はこちらから

【書評】証券分析【1934年版第1版】第8章~第11章

 

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