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【書評】青い蜃気楼:エンロンを知るにはこの一冊で十分

2021/08/30
 

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40代の読書家 兼 エコノミスト。 普段、マネーに世界中をさせています。ブログでは、おカネ(投資)とホン(書評)とタビ(旅行)についてまとめていきたいと思います。「いいね」を押してくださったり、ツイートしてくださると励みになります。 よろしくお願いします。

2004年に上梓された「青い蜃気楼 小説エンロン」を紹介しようと思います。エンロンと聞くと粉飾という2文字が頭に浮かびますが、この本を読めば、功罪の「功」の部分も理解できます。また、どのように粉飾にいたったのか、ビークルをどのように活用したのかというストラクチャーの概観を理解することもできます。

本書は小説仕立てですが、多くの参考文献を使っていることもあり、仕組み・背景を理解するのに貴重な1冊です。

改革

1987年英首相のマーガレット・サッチャーが中央発電局分割にあたって発した言葉です。この言葉は、普遍で刺さる言葉です。

人間というものは自分の将来を自分で決められる状況に置かれると、上からの指示に従うしかない制度の中にいる時より、遥かに真剣に将来のことを考えるようになる

 

マーク・トゥー・マーケット

時価に洗い替えるマーク・トゥー・マーケットは、仕組債・デリバ・FXなどで馴染みが深いですが、あくまでも条件付きで、超長期にも理論上は適用可能であるといっても、超長期にわたってカウンターパーティーリスクや規制リスクを織り込まないのは、現実世界では不自然です

「マーク・トゥー・マーケット」会計ははたして適正なものなのか?答えはイエスである。ただし、最長二十年間にも及ぶそれらガス供給契約の有効期間中、契約相手の不履行や税制の改正といった重大な事態が一切発生しなければ、という条件付きだ。

 

ガス・スワップ取引

スワップ取引は、金利の世界で馴染みがありますが、商品にも応用したというのは画期的だと思います。

顧客との交渉において、ガスの輸送コストがネックであり、この輸送コスト削減というビジネスニーズから、エンロンは輸送コストを転嫁しない分、安く供給可能という背景からスワップ取引を提案。商品の質はどこから調達しても同じ、ただ、輸送コストという実需の特性上、どうしようもならないものを回避するために、スワップに辿り着いたのだと思います。頭の使い方が実にうまい、「知識に拠って立つ」ビジネスです。

御社はこれまで通り地元のガス会社から変動価格でガスを買付け、エンロンがその変動価格をガス会社に払い、御社はエンロンに長期固定価格を払う

 

VPP(Volumetric Production Payment)契約: 天然ガス買付契約・鉱区所有権

エンロンがガス生産者に対して前払金を支払うことで一定期間固定価格でガスを買付け、かつガス生産者が倒産した場合には、他の債権者が絡む煩雑な破産手続きに巻き込まれることなくガス鉱区に対して所有権を獲得することを約した契約。

このVPPが増加すればするほど前払金の支払い負担がエンロンに重くのしかかるため、SPE(Special Purpose Entity)を作り、VPP契約を移管し、SPEが保有するVPP契約が生み出す収益をエンロンが変動金利にスワップし、銀行から保証を取り付けたうえで、銀行融資と劣後にわけて資金調達。

後に癌細胞のように三千五百以上に増殖し、エンロンを蝕んでいったSPEの記念すべき第一号・・・の萌芽は、純粋なビジネス・ニーズから生まれた取引だった。

 

電力会社の怠慢な経営

日本の電力会社は総原価方式(電力会社のすべての費用に報酬を上乗せするから赤字にならない値決め)で胡坐をかいてきたから、消費者のためのコストカットという発想に至らない愚鈍な企業です。

電力会社は市場経済の洗礼を受ける必要がある。

 

政治家相手の袖の下

サラリーマン金太郎にもこういった場面は出ていましたが、政治献金というのは、会社ではなく個人を介して行うのはどこの国も同じようです。

個人のボーナスを介した金のやりとりならエンロンの帳簿には一切出ない

 

水市場

ガスで成功を収め、電力でも成功を収めたエンロンが苦戦した市場の一つは水です。

水の市場は電力ほどには規制から自由ではない。両者を比較すると政治や行政が介入してくる度合いが根本的に異なっている。電力は長らく商業的に運営されてきたが、水はいまだに公共的な性格を多分に保ち、その市場は一握りの水道会社に独占されている。

 

世界初の天候デリバティブ

いろいろな分野に果敢に攻めるエンロンは天候デリバティブのパイオニアでもあります。東北地方の桜の満開がちょうどGWにあたるかどうか、といった天候でその日の売上が左右されるようなビジネスにニーズがあるデリバティブです。

天候デリバティブを売った場合、売ったものと反対のデリバティブを組み込んだ債券を発行してリスク・ヘッジするのも一つの方法だ。すなわちエンロンは、ユーロディズニーに対して雨が降れば一定額を支払うが、債券の投資家には雨が降った場合元本償還額を減らせるようにして、自社のリスクをゼロにするのだ。当然、ユーロディズニーと債券の投資家の間で鞘抜きして利益を上げる。

気温や雨量といった天候の変動による企業業績への影響を軽減する天候デリバティブは、米国の電力自由化を背景として発達した。自由化に伴い、気候の寒暖で電力価格が大きく上下するようになったため、それを回避する必要が生じたのだ。

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会社の危険な兆候

問題があるとされる会社のCEOが曖昧な理由で突然会社を去ることほど危険な兆候はない。

まさに、このとおりだと思います。経営者だからこそ知りうる悪い内部情報を知ったら、後任の経営者はさっさとトンずらしたいと思います。私は、次の日銀総裁が就任後さっさと退任したら、その退任イベントが日本が破綻するトリガーだと見ています。

 

MMF元本割れにも波及したエンロン騒動

MMFは元本割れすると追加の募集ができなくなる。それは日本の債券税制がいまだに「債券はデフォルトしない」という古い発想で、キャピタルゲイン(あるいはロス)に対してどう課税すべき規定がないことからきている。

日本の税制の不備、制度設計の至らなさを言い訳に、エンロンの信用力が悪化している状況を看過し、おおやけどに至ったのは不作為にほかなりません。顧客保護を考えれば、少しの元本割れでも、エンロン債が大きく痛む前に時価評価して、売却すべき事案です。

なお、日銀は国債を時価評価していませんので、じわじわとではなく、時価評価せざるを得ない状況に追い込まれたら、ある日突然、日銀が破綻する可能性があります。

 

チャプター11とチャプター7の違い

チャプター11の適用を受けることができれば、金融機関に債務を棒引きしてもらい、業務を縮小して会社再建を目指すこともできます。

一方で、チャプター7は清算手続きであり、会社は跡形もなく消滅することになります。

デルタ航空やGMなど錚々たる古い体質の企業がチャプター11を申請し、再建を果たし、再上場していますので、チャプター11=清算ではありません。

 

書籍の目次

本書は以下のとおり、構成されています。

  • プロローグ
  • 第一章: サッチャリズム
  • 第ニ章: カウボーイ対インディアン
  • 第三章: ガス銀行
  • 第四章: オフバランスの魔術師
  • 第五章: 電力革命
  • 第六章: 青いダイヤ
  • 第七章: エンロンオンライン誕生
  • 第八章: LJM2号
  • 第九章: 黒船上陸
  • 第十章: 青森進出
  • 第十一章: ケツの穴野郎
  • 第十二章: 内部告発
  • 第十三章: 空売り屋の襲撃
  • 第十四章: 救済合併
  • 第十五章: 破綻
  • エピローグ
  • 主要参考文献
  • あとがき-その後のエンロン
  • 巻末 金融経済用語集

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