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【書評】証券分析【1934年版第1版】訳者まえがき~第1章

2021/08/30
 

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40代の読書家 兼 エコノミスト。 普段、マネーに世界中をさせています。ブログでは、おカネ(投資)とホン(書評)とタビ(旅行)についてまとめていきたいと思います。「いいね」を押してくださったり、ツイートしてくださると励みになります。 よろしくお願いします。

ベンジャミン・グレアムとデビッド・ドッドによるバリュー投資のバイブルともいえる証券分析【1934年版第1版】を紹介します。全52章から構成される大作のため、後々見返すことを念頭に、書評というよりもむしろ各章の要約的な位置づけとして複数回に分けてまとめます

要約・備忘録としての位置づけが近い、このブログシリーズの自分ルールについては、別記事でまとめました。

今回は、

  • 訳者まえがき
  • まえがき
  • 第1章 証券分析の役割と本質的価値

をまとめます。

訳者まえがき

そもそも、投資と投機の違いを明確に説明できるかというと、多くの方があやふやだと思います。多くの個人投資家は自分にルールを設けず、「勝てば官軍」的な勢いで投資をしていると思いますが、その多くは投機ではないでしょうか?

本書では、投資と投機を明確に区別しています。投資と投機を明確に定義しなかったことが 1928 ~ 29年の熱狂的な相場とその後の暴落を招いた一因になっているとの反省によるものです。

まえがき

まえがきの冒頭にて、いきなり、「まったくの初心者は対象としていない。」と触れられています。1,000ページ弱の本書は読む人を選ぶ、そういった雰囲気が漂ってきます。1,000ページを読むには相当の自己投資(本書を読むことに時間を割くこと)が求められます。

そもそも、知識や理解度が及ばなければ、時間の無駄になりかねないですし、自己投資しても得られるリターンは少ないと思われます。

序文

投機について、フランスの古い諺に「その変化が大きければ大きいほど、その結末は似通ってくる」というものがあります。個人投資家の勝ちパターン(負けパターン?)に、コツコツドカンというものがあると思います。コツコツと小さな勝ちを積み上げても、一回の負けでこれまでの勝ちをすべて吹き飛ばしてしまうパターンです。投資という名の投機では、銘柄分析は関係なく、タイミング・タイミング・タイミング。これでもかというくらいタイミングがすべてです。

投機

投機をするときに重要であるのは、「何を」買うのかということよりも「いつ」買って「いつ」売るのかということである。さらに数学的な法則に従えば、利益を得るよりも損失を被る可能性が高いというのもこれまた投機家の宿命であろう。」

勝てば官軍の個人投資家にとって、結果的に投資も投機も同じ分類になりかねないですが、「投資と投機をめぐる本当に難しい問題は単にこの2つを定義するだけで済むものではない。問題は投資に見せかけた投機が大失敗に終わるといったことよりも、昔から安全であるといわれてきた確実な方法による投資が悲惨な失敗に終わっていること」にあると触れています。

投資教育

したがって、「一般投資家に対しては安全かつ慎重に債券を選択するための教育が強く求められる」とされます。多くの個人投資家は債券には見向きもせず、山っ気を出して一攫千金を目論んでいるかと思います。夢を見ること自体・目標を持つこと自体は良いことですが、多くの方はその夢・目標へのアプローチ・手段が無茶になっているのではないでしょうか?

債券投資にあたって注意すべきことは「優良債券の保有者は新しい重大なリスクに直面することになった。それはインフレの高進とそれに伴う通貨の下落が債券の元利価値を目減りさせていること」と示されているように、インフレと通貨の減価です。

「こうした問題は基本的には一時的な性質のものである。その影響は投資対象としての債券の価値ではなく、通貨そのものの価値に関係しているため、その適正な水準がどこであろうとも、通貨の価値がそこに収まればこの問題は解消する。」「通貨の価値が再び安定すればそうしたカネ離れはすぐに解消する。」とされていますが、私は疑問です。例えば、トルコリラ建て社債は、一時的な状況がいつまで続くのか不透明ですし、満期を迎えるまでに元に戻るか疑問です。

普通株投資について、「相場の上昇期の早い時期に保有株式を売却して利益を確保し、それ以降は再びチャンスの時期が来るまで投資を控えるというのが常道」とのことで、鯛を食べるときは、頭と尾を残すというのと似ていると思います。

モラル崩壊

投資銀行のモラル崩壊には、「どんな証券でも売れるという安易さ」と「安全な投資対象となる証券が絶対的に不足していた」ことにあるとされ、また、「投資適格な証券の不足は、企業の間で普通株式発行による資金調達がブームになったことがその大きな原因」と位置付けられています。どのような基準(ものさし)をもって投資適格とするのかは、非常に重要だと思います。

モラルが崩壊した投資銀行が、飄々と&何食わぬ顔して大通りを歩いていることができるのも、「この次の上昇相場までに豊富な投資資金が集まれば、これまでにもそうだったように、一般投資家は投資銀行が彼らに侵した罪を許すかまたは忘れてしまうものだ。このため将来における一般投資家の保護は、彼ら自身が投資銀行の不正を見抜くというよりは、投資銀行が一度犯した間違いを繰り返すことなく、失った信頼を徐々に回復すべく顧客に対して節度ある態度を続けることによってしか実現しないだろう」とあるように、一般投資家は過去を忘れやすいという点にあります。他の金融系の小説・自伝などを読んでも思うのですが、投資銀行家歴が長い人ほど神経が麻痺しているように思います。

マーケットが人間の心理的要因に左右されるという点について、「投資家の多くはこうした無形資産の投機的な評価額で現実の株価を測り、元本の価値はインカムゲインによって決まるという昔からの厳しい基準を適用することの大切さを忘れてしまったのである」と整理されています。(余談ですが)これに則っているからか否かわかりませんが、某日系証券会社のアナリストレポートは、配当割引モデルで目標株価を出していました。個々の企業の成長フェーズを無視した一律の方法に疑問を覚えましたし、他の算出方法を適用しない理由が記載されていないので、不審に思いました。

価値と価格は一致しない

「投資対象となる証券を選ぶ時には、たとえインカムゲインだけを目的とする場合でも、そうした市場価格の条件に加えてその証券の「本質的価値」(Intrinsic Value)についても十分に考慮する必要がある」と示されていますが、本質的価値自体を正確に捉える必要はないと思います。

投機というのは成功するのが極めて難しいという現実に変わりはない。人間の心理というものは相場が最高値にあるときに最も強気になり、どん底にあるときに最も弱気になるからである」。だから、投資は難しいんですよね。自分ひとりだけが勝てるわけではないですし。全員が全員、人間の心理から逸脱していれば、それはそれで相場の価格形成はまた違った様相を見せてくるかもしれませんが。

重要な事実や見落とされている事実に目を向けることができれば、割安なら買い増せばいいですし、割高であるなら、売るあるいは買わないという選択肢をとればよいです。こういった視点は、「基本的には慎重な投資に向けて投機の誘惑から投資家を守る貴重な防衛策」になります。

第1章 証券分析の役割と本質的価値

冒頭から、分析の定義と証券アナリストの役割についてページが割かれています。

分析とは、「入手可能な事実を詳細に検討し、確立された原則と有効な論理に従ってそこからある種の結論を引き出すこと」と定義されます。

証券アナリストの役割

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「証券アナリストの役割とは当該証券の実際の具体的な価値を明らかにすること」であり、「本質的価値と市場価格の差を発見することは証券アナリストの重要な役割」です。「証券の本質的価値とは、恣意的な価格操作や市場の心理的な雰囲気などで形成された価格水準とは別に、その発行企業の資産、収益、配当、将来の業績見通しなどの事実によって裏付けられた本来的な価値」のことをいいます。「その証券の本質的な価値を市場価格のように明確に決定されるものと考えるのも大きな間違い」です。

本質的価値

「分析の目的は特定証券の本質的価値を正確に求めることではないという点をよく認識すること」であり、日々刻々と状況は変わるため、正確に求めることは出来もしないので、程度問題です。

「証券分析にできることは、①その証券の時価はその価値が保証され、またはその証券を購入することが正当化される水準として妥当なものなのか、②その証券の本来的な価値は時価をかなり上回っている、または下回っている、などについてヒントを示すことである。こうした目的を果たすには、本質的価値の大ざっぱな数字を求めるだけで十分である」とされているように、分析の精度は程度問題であり、確証を得られる水準で良いと思います。

証券アナリストは証券を分析をすることを業としていますが、「証券アナリストの有効な役割を妨げるのは、①不十分または不正確なデータ、②将来の不確実さ、③不合理な市場の動き」の3つです。

証券アナリストの役割を妨げる要因があるなかにおいて、「証券アナリストの役割が過小評価、ときには過大評価されている証券の発見に深くかかわっているため、証券アナリストが相場の動きと無関係であるわけにはいかない」ので、むしろ、相場と共に生きていく腹括りが必要だと思います。

なお、「証券アナリストのこうした役割は次の2つの前提を条件としている。すなわち、①証券の時価はその本来的な価値から常にかい離している、②時価と本質的価値とのかい離は自律的に修正される傾向にある」ものの、時価も本質的価値も流れる水のごとく、刻々と変わりゆくものであるが故、自律的に修正されたとしても完全に一致することは稀だと思います。

マーケット

マーケットは「各証券の特質に応じて非人格的で正確なメカニズムに基づいてその価値を反映する計量器ではない」ですし、「むしろ、無数の個人が理性と勘定に基づいて選択した結果を集計する「票数計算機」のようなもの」と位置付けられます。多くの人間の思惑で相場が形成されているため、数字は意思を持っていると思ってみたほうがよいです。

投機の問題点

投機は「投機家自身に大きなハンディを負わせるもので、そのリスクは証券分析に基づく利益よりも大きい」ことに注意が必要です。負けること前提でいたほうが気持ちが楽かもしれません。

「投機的な状況下では基本的な分析的要因を瞬時かつ速やかに修正していかなければならない。」修正を怠れば(変化に気づかなければ)大やけどになりかねません。

そのほかに問題点として、「証券分析の対処能力を超えた未知の要因が出現すること」も挙げられます。

証券の分野ではかなりよい成績を収める数学的な有利さよりも、投機的な状況下では運がなければまったく価値がなくなってしまう」。投機家はこれを肝に銘じておいた方が良いと思います。

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【書評】証券分析【1934年版第1版】第2章~第3章

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