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【書評】巨大銀行のカルテ リーマンショック後の欧米金融機関に見る銀行の未来

2020/11/16
 

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40代の読書家 兼 エコノミスト。 普段、マネーに世界中をさせています。ブログでは、おカネ(投資)とホン(書評)とタビ(旅行)についてまとめていきたいと思います。「いいね」を押してくださったり、ツイートしてくださると励みになります。 よろしくお願いします。

リーマンショックから既に10年以上が経ち、リーマンショック関連・リーマンショック以降の金融業界の流れについて時系列を辿った書籍は多く上梓されていますが、今回紹介する「巨大銀行のカルテ」は、特定の金融機関という切り口でその金融機関の沿革・ビジネスの栄枯盛衰を描写しています。

著者のリサーチ能力は非常に高く、内部の人間なのではないか?と思うくらい、本書の中ではデータと対象地域における競合他社・マーケット環境の把握、自社のポジショニングが整理されており、自社の成り立ちから直近までの沿革が描かれています。また、それを惜しげもなく披露してくれる姿勢に好感を持てます。(参考文献が巻末に記されていますが、その参考文献のリストアップに22ページも割かれています。)

なお、私は、本書を読み終わった後にBNPパリバ株を購入したくなりました。そう思うくらい特定の金融機関のビジネスモデル、他行との比較、戦略が書かれています。(注:マネックス証券や楽天証券、SBI証券では取り扱っていないので投資できません。)外資系金融機関の名前を知っていても、金融機関によって事業戦略は明確に異なり、その異なりがリーマンショックが境となって明暗が分かれます。本書を通じて、ビジネスモデルの巧拙・事業ポートフォリオのバランス、買収タイミングの違いがその後のビジネスに与える影響などを把握することができます。

書籍の目次

 

  • 第一章: ドイツ銀行の憂鬱
  • 第ニ章: BNPパリバは欧州のJPモルガン・チェースとなるか
  • 第三章: リーマンショックが米銀に与えた影響
  • 第四章: 王者の座に君臨するJPモルガン・チェースと四代米銀グループ
  • 第五章: 永遠のライバル ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレー
  • 第六章: 新たなビジネスモデルを模索する欧米金融機関

 

魅力あふれるマエストロの存在が読者を虜にする

他の書籍と違って、本書にはマエストロが登場します。様々な事業部を俯瞰しつつ、ここぞというときには機を逃さず特定の部門を強化して会社を強靭にする、そうすることで競合他社を引き離しにかかろうとするCEOは、まさに指揮者そのものです。

各章をめくって最初の数ページはマエストロ(CEO)が小説チックに描写されています。最初の数ページの読みやすさは、まるでテンポのいい小説を読んでいるような心地を覚えます。多くの参考文献に基づく本書は、一見、論文?と思うくらいデータ・事実に基づいた文章ですが、マエストロの人間味もあって、本書は多くの方に読みやすくなっていると思います。

2018年2月

ダイモンCEOは、JPモルガン・チェースの

新しい本社ビルの構想をみて、

笑みがこぼれた。

p216の一節より引用

 

金融機関同士のM&A

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米国金融機関も欧州金融機関も自らに足りないビジネス・市場を、買収を通じて獲得しており、買収が起こること自体、競争環境において至って健全な状況であると本書を通じて実感しました。

翻って日本の金融機関は、都銀、地銀、第二地銀の他に、信用組合、信用金庫などなど無駄に多い気がします。提供する内容はどこも同じ、ただ物理的な商圏・顧客層が異なる。商圏・顧客層が異なるだけならさっさと統合して、リストラして経費率を引き下げる努力をした方が良いと思いますが、買収されないであろう、公正取引委員会による審査で買収が認められないであろうと、金融機関の経営層は胡坐をかいて不作為が続いているうちに、日本の金融機関は相対的に競争力を失っている状況にあると思います。(マイナス金利という言葉が独り歩きしていますが、日銀のサイトから取得できるExcelを基にすると、日銀当座預金のうちマイナス金利適用残高は、都市銀行が0円、地銀が580億円、第二地銀が200億円です。)

日本の金融機関の足を最も引っ張っている存在は、金融庁や公正取引委員会といった行政機関であり、足を引っ張っているが故に結果として横並び、また、それに安心するマインドセットの行員達。さらに天下り官僚を頭取に迎え入れている地銀などなど、持ちつ持たれつなエコシステムが出来上がっていることが要因であり、この既成のエコシステムを内部から打ち壊そうというモチベーション・インセンティブは働いていない状況。このような状況の中、非金融機関によるダイナミックな動き・働きかけ(送金手数料の自由化)が、疲弊して自らを変えようとしても変えられない旧態依然としたこの業界を変える最後の光だと思います。

日銀のExcelを見ていて思いましたが、日銀の行員はExcelのセンスがなさすぎです。加工しずらいこと、このうえない。Excelがすべてではありませんが、日本の名だたる大学を卒業した人たちは、気が付いたら何もスキルの身につかない仕事をしているのかもしれませんね。

楽天から購入される場合は、こちらから。

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