港区の経済学 第1回:「港区とは何か? – 東京の“別世界”」
海外帰り、港区在住2年目の私が肌を通じて感じ取った「港区」をシリーズ全10回でお伝えしようと思います。
途中、構成は変わるかもしれませんが、以下を予定しております。
- 第1回:港区とは何か? – 東京の“別世界”
- 第2回:港区民の経済力 – 富裕層のリアルな実態
- 第3回:不動産バブルの真相 – 港区の地価はなぜ高い?
- 第4回:港区で飲むコーヒーの経済学
- 第5回:ラグジュアリー消費の真理 – 港区のブランド戦争
- 第6回:港区とITベンチャー – スタートアップの聖地
- 第7回:港区と外車 – なぜポルシェがこれほど多いのか?
- 第8回:港区のナイトライフ経済
- 第9回:子育てと教育の投資戦略 – 港区ママたちのリアル
- 第10回:未来の港区 – これからの発展はどうなる?
さて、最初の第1回は、そもそも「港区」とは何か?知っているようで知らない港区を少し掘り下げてみようと思います。
東京のどこかには、誰もが憧れる「別世界」があります。その名は「港区」。テレビドラマやニュース、SNSでたびたび登場するこの地域は、もはや東京の中でも特別なブランドを持つ存在。六本木ヒルズからお台場まで、港区はきらびやかで、ちょっと近寄りがたいオーラに包まれているかもしれませんが、いったい何がこの“別世界”を生み出しているのでしょうか?港区の経済的な特性を追いながら、その魅力を解き明かしていきたいとおもいます。
目次
港区ってどこ?
そもそも、港区の位置を正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。地図上で確認すると、港区は東京都の中心部、皇居の南西に広がっています。麻布、青山、六本木、虎ノ門、芝浦といった、聞いただけでキラキラとした雰囲気が漂う地名が並ぶエリアです。さらに、海岸線を含むことでお台場まで抱えているこの区は、歴史的にも現代的にも興味深い発展を遂げています。
面積はおよそ20.36平方キロメートル。東京23区の中でもさほど広くはなく、住民も15.34万人しかいませんが、ここに詰まっている情報量と経済力は驚異的です。ちなみに、面積は狭いものの、お金が飛び交う量ではトップクラス。まるで東京のマンハッタンといったところでしょうか。
港区といえば、なぜか“リッチ”のイメージ?
「港区」と聞くと、なぜかリッチなイメージが浮かぶのはなぜでしょうか?これは単にメディアの影響だけではないと思います。実際、港区民の平均所得は東京都の中でも非常に高く、東京都全体の平均所得が約600万円と言われる中、港区はその倍以上の約1,400万円。これでは「港区女子」なんて言葉が生まれるのも無理はありません。六本木ヒルズや東京タワーの周辺を歩くと、フェラーリやランボルギーニがしれっと駐車している光景も珍しくないです。そんな光景は日常であり、この街が作り出す“別世界”の一部です。実際、私もベビーカーを押しながら歩道を歩いていると、ポルシェやメルセデスGクラスは当たりまえで、2歳の息子の語彙力は以下の通り。2歳児でこれら外車を見分ける選別眼、認識力は港区だからこそ培われる能力(?)でしょう。まさに、環境が人を育てている証左です。
- ポルシェ:ポー
- Gクラス:ジェジェ
- ランボルギーニ:ランボ
- ベントレー:ベンベ
さて、別世界に話を戻すと、ここにはちょっとしたトリックもあります。港区は、広いとはいえないエリアに多くのビジネスパーソンや大企業が集結しているため、経済的な数値が上振れして見えます。それでも港区が放つ「金の匂い」は否定しようがありません。カフェでコーヒーを一杯飲むのも、それなりの価格になることが多いのは、土地の賃料や物価の高さが反映されているからです。
なお、マイナビの記事によると港区の推定平均年収は1,397万円とされていますが、総務省が公表している「令和5年度 市町村税課税状況等の調」の第11表を基に計算すると、1人あたり課税対象所得金額が約1,397万円であり、この金額には、給与所得や株式等の譲渡所得、先物取引の雑所得なども含まれています。平均給与が1,397万円ではないことに注意が必要です。(この金額は平均値であり中位値ではないため、多くの億り人が平均を底上げしているかもしれませんが、約1,400万円は日本全国を見ても断トツ1位です。
万円 | 総所得金額等 | 分離長期譲渡所得金額に 係る所得金額 |
分離短期譲渡所得金額に 係る所得金額 |
一般株式等に 係る譲渡所得金額 |
上場株式等に 係る譲渡所得金額 |
上場株式等に 係る配当所得金額 |
先物取引に 係る雑所得金額 |
課税対象所得 |
港区 | 1,070 | 61 | 4 | 135 | 109 | 12 | 6 | 1,397 |
千代田区 | 942 | 51 | 2 | 75 | 40 | 5 | 5 | 1,121 |
渋谷区 | 811 | 45 | 1 | 113 | 97 | 5 | 2 | 1,074 |
中央区 | 702 | 27 | 1 | 28 | 19 | 2 | 2 | 781 |
目黒区 | 629 | 36 | 1 | 35 | 12 | 2 | 2 | 717 |
話がそれますが、この総務省が公開している資料は面白いです。語弊がありますが、先物取引が上手な市町村(一人当たりの先物取引を通じた所得第一位の市町村)は東京都の新島村です。
なぜこんなに稼ぐ人が多いの?
港区が「稼ぐ人たちの街」として知られるのは、単なるイメージだけではありません。実際、多くの外資系金融機関やIT企業が港区に集まっている。たとえば、虎ノ門エリアは近年、虎ノ門ヒルズの開発でさらにビジネス街としての存在感を増したし、汐留や芝浦は日本経済の中心地とも言える大手企業が立ち並びます。さらに、六本木には外資系企業のオフィスが多く、グローバルに活躍するエリートたちが行き交っています。
そんな彼らが「港区に住む理由」は複数あります。まずは通勤の利便性。都心のビジネス街にすぐアクセスできるのはもちろん、空港へのアクセスも抜群。また、高級マンションに住むことで得られるステータスや、安全で便利な生活環境も大きな魅力だ。公園やラグジュアリーなショッピング施設も多く、仕事も遊びもすべて完結できる環境がここにはあります。
ちなみに、私は通勤の利便性(在宅勤務ができるとはいえ、Door to Doorで30分以内)を重視しました。保育園に預けて、呼び出しの電話が鳴ったとしてもすぐに迎えに行ける距離は何物にも代え難いです。それに、残業代の支給がない勤務体系ですが通勤時間は時間の無駄です。
通勤時間往復3時間(片道90分)を往復1時間(片道30分)の距離に縮められるとしたら、片道90分の郊外に住むよりかは片道30分の都心に住んだほうが、毎日2時間、月40時間を平日に使うことができます。残業して、残業代を得られるなら40時間の残業代の手取りと通勤時間往復2時間の短縮は等価になります。
なお、東京商工リサーチの調べによると、港区の住人の6.6人に1人が社長です。
港区の象徴、六本木ヒルズと東京タワー
港区のシンボルを挙げるとすれば、やはり六本木ヒルズと東京タワーでしょうか。六本木ヒルズは2003年に誕生して以来、日本を代表する複合商業施設として知られていますし、高層ビルからの眺めは格別で、そこには高級レストランや美術館、ショッピング施設が揃い、経済的な中心地のひとつとして機能しています。
一方、東京タワーは1958年に建設されて以来、日本のランドマークとして愛されてきた。観光名所としても有名ですが、2018年まではテレビ電波塔としての役割を果たしていました。東京タワーの周囲には、多くの外国人観光客が訪れ、観光業も大きな経済効果を生んでいます。なお、アジア人観光客の多くにとっての東京タワー撮影スポットは、私の知る限り2カ所あり、1つ目は芝公園、2つ目は都営大江戸線の赤羽橋駅を赤羽橋口から出て横断歩道を渡ったところです。特に赤羽橋口のほうは若いアジア人カップルが列をなして、写真撮影待ちをしているほどです。
六本木ヒルズも”ちいバス”を使えば片道100円で行けます。ヒルズは庭です。六本木ヒルズレジデンスの裏手、六本木さくら坂通り沿いに位置し、ロボットの滑り台で有名なさくら坂公園で息子を遊ばせ、帰りはブリコラージュ ブレッド&カンパニーで農民パンを買って帰っています。(ブリコラージュは、六本木けやき坂通りの坂を上り切ったあたりに位置し、いつも長蛇の列で朝早くから観光客やヒルズ界隈の住民でにぎわっているパン屋です。農民パンは、ふわふわして甘く日本人向けにアレンジされたレシピな気がしますが、欧州帰りの私も美味しく食べています。農民パンの焼きたてをゲットしたい方はは9:30頃に行くとよいです。)
港区の“別世界”感はなぜ生まれたのか?
では、なぜ港区にはこうした“別世界”感が生まれたのでしょうか?その理由の一つは、歴史的に見てこの地域が常に革新の場であり続けたことにあるのではないでしょうか。江戸時代から港湾として栄えたこの地は、明治維新後には国際的な経済の玄関口として発展しました。そして戦後には都市再開発が進み、常に最先端のビジネスが集まる場所となっています。
現代でも、時代の流れに敏感な人々や企業が集まり、進化し続けている港区。ここに住むことは、ある種の“成功の証”とされ、その幻想が経済的価値をさらに高めているのかもしれないです。(私個人はまだまだ成功には程遠いですが、世間一般的には成功の部類かもしれないです。)
次回は、港区の経済力を象徴する「港区民のリアルな所得事情」に迫る予定です。次回も、港区の秘密に迫る経済学をお楽しみに!