【株主価値毀損経営】日本郵船:クリスタルクルーズの売却と疲弊する本業
前の記事でクルーズについて書いていた際、日本郵船についても触れたくなったので別記事にしました。日本郵船は金の成る木をろくに育てもせずに売却してしまっています。
目次
日本郵船のクリスタルクルーズ売却は失敗事例
2015年3月に、日本郵船は子会社である高級クルーズ会社であるクリスタルクルーズをマレーシア企業であるゲンティングループ傘下のゲンティン香港に売却(売却完了は2015年5月)してしまいましたが、ゲンティン香港の下、クリスタルクルーズは変貌を遂げます。ゲンティン香港の傘下になったクリスタル・クルーズはこれまで2隻しかなかった事業を拡大し、リバークルーズ、ヨット、エクスペディションと船のサイズを変え、行けるところにはどこにも行く高級クルーズ路線に向かいます。
(クリスタルクルーズ社のウェブサイトより)
海・川だけかと思いきや、豪華な旅行を提供するためには手段を選ばないクリスタルクルーズは、空にも事業を展開し、2017年にクリスタル・ラグジュアリー・エアを設立し、チャーター便を運航しています。(一度、利用したいです。)
サラリーマン社長がクルーズ旅行の良さを知らず、可能性を見逃し、結果として子会社であったクリスタルクルーズに力を入れずに手放したならば、お粗末経営かと思います。儲からない本業に力を入れて、儲かる種に水をやらず30年弱の間、放置し、競争が激しいレッドオーシャンに資源を集中する経営は、忖度しすぎて経営の無能っぷりを発揮しています。結果として、日本郵船は株主価値毀損経営を実践しています。
日本郵船の時価総額は下落傾向
クリスタルクルーズの売却が引き金になったのかどうかはわかりませんが、2015年3月頃から一貫して時価総額は下落基調です。会社が株主のものであるという発想・資本効率の発想が浸透しているならば、ホールディングス体制を敷いたうえで、本業を主とする会社を子会社化し、そのうえで、所属従業員と共に、その子会社を第三者に売却してクルーズ事業に注力することもできたのに、なぜ、あえて儲かりもしない事業を続けるのでしょうか。非合理的な経営と言わざるを得ないです。日本郵船のコーポレートガバナンスには、以下のように書いてありますが、現状、実現できていないから、あえて書いているのかもしれませんね。
長期的な株主価値を最大化することのできる企業を目指し、コーポレートガバナンス体制の充実とグローバルな連結ベースでの内部統制の整備・向上に取り組んでいます。
日本郵船の時価総額推移(バフェットコードより)
セグメント別売上高等の推移(バフェットコードより)
海外のクルーズ会社は安定した好業績
ノルウェージャン(大衆)、オーシャニア(高級)、リージェントセブンシー(超高級)のラインナップを運航しているノルウェージャン・クルーズライン・ホールディングス(NCLH)の売上高、営業利益、営業利益率の推移(macrotrendsより)
クイーン・エリザベスを運航するキュナード(高級)、コスタ(大衆)などをグループ傘下に収めるカーニバル社(CCL)の売上高、営業利益、営業利益率の推移(macrotrendsより)