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【6740】JDI – 2016年3月期の有報から垣間見るアップルとの密約

 
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読書家 兼 投資家。 自分の経験・知見、考えていること、感じ取ったことを資産として、残していきたいと思います。

今朝の日経新聞朝刊に”アップル「密約」の呪縛  「日の丸液晶」に蹉跌”という興味深い記事がありました。以下に一部引用します。

1月、台湾部品メーカーの淳安電子(SOE)トップの秦国峰は憤慨した。・・・JDIは2016年末に稼働した白山工場(石川県白山市)の建設資金をアップルから借り、約1000億円の返済が残っている。アップルからの受注量に関係なく四半期ごとに一定額の返済を求められ、JDIの現預金がある水準まで下がるとアップルが工場を差し押さえることもできる。JDIにとってアップルはスマートフォン(スマホ)「iPhone(アイフォーン)」用パネルの販売先で、売上高の過半をもたらす最大顧客だ。だが密約がある限り、アップルが減産に踏み切ればJDIはたちまち資金繰りが苦しくなる。・・・売り上げ減とアップルへの返済で資金繰りは悪化していった。不都合な真実を隠しきれなくなったJDIは交渉終盤にようやく密約の存在を台中連合に明かした。・・・

上記内容から、以下の2点が頭をよぎりましたが、1点目について書いていきます。

  • 重要な契約を締結しているならば有報になにか記載があるのでは?
  • でも、有報に記載があるならば、当初からBuyerは知っているはず。交渉終盤になってようやく密約の存在を明かしたというのは法務DDの手落ち?関連資料・契約書を提出していなかった?

アップルからの借入金は前受金勘定として計上

建設資金をアップルから借り入れて残債が1,000億円残っているならば、有報に記載があるのではないかと思い、直近(2018年3月期)の有報を見てみましたが、「経営上の重要な契約等」には、コミットメントライン契約の締結の記載のみです。一方、B/Sの負債の部で1,000億円を超えている勘定科目は、前受金(1,282億円)のみです。短期借入金として、990億円計上されていますが、注記より、980億円がコミットメントラインの枠を使用して既に借り入れていることがわかります。

次に、本件密約は2016年末に稼働した白山工場に関するものであるため、当時の有報を見てみたところ、”本工場の新設に当たっては取引先からの前受金をその費用に充当する予定”である旨、記載がありました。

ただ、この記載がされている2016年3月期の有報において、経営上の重要な契約に該当するものありません。1,000億円超のコミットメントライン契約が重要な契約である一方で、本件アップルとの契約が重要な契約にあたらないという理由がわかりません。

会社法施行規則第120条1項五号によると”当該事業年度における次に掲げる事項についての状況(重要なものに限る。)”と記載があり、同号ロに、”設備投資”の記載があります。2016年3月期の有報によると、白山市の第6世代液晶パネル製造ライン新設に係る投資額は1,213億円です。(当該事業年度の設備投資総額1,797億円の約68%に該当しますが、どのような基準で重要ではないと判断したのでしょうか。)なお、2017年3月期に計上した同製造ライン新設に係る投資額は472億円ですので、白山工場建設に総額2,269億円が投じられています

また、白山工場は稼働前から担保資産(建設仮勘定: 1,214億円)となっており、前受金の担保(1,202億円)であることが想像できます。

負債の推移

2018年3月期の流動資産が2,710億円、流動負債が4,241億円であることから、流動比率が悪化しており、短期的にみて健全ではありません。また、固定負債が1,084億円であることから、定期的な設備投資・更新を必要とするメーカーとして、有形固定資産を支える資金が長期性ではなく、短期性というのはいびつです。このような状況も踏まえて、8億4千万株を発行価格50円(参照元)で第三者割当増資をするのでしょうか。ただ、2019年3月期第3四半期のB/S(流動資産: 3,459億円、流動負債: 4,870億円、固定負債: 877億円、純資産:1,051億円)を踏まえると、420億円増資したとしても焼け石に水状態であり、しかもアップルとの契約によって制約を受けるとしたら、出資側にしてみれば、憤慨するのも当然な気がします。

負債の部の推移を見ると、2016年3月期から前受金が大きく伸びていることがわかります。流動負債を暖色系の色に、固定負債を寒色系の色にそれぞれ分けてみましたが、百分率を見る限りにおいて、流動負債の方が圧倒的に比率が高いことがわかります。

資産の推移

資産の部を見てみると、有形固定資産・その他流動資産の減少に伴い、資産全体が縮小していることがわかります。その他流動資産には、商品・製品、仕掛品、原料費等を含めていますが、これらの勘定科目の数値は軒並み減少しています。製造業でこれら勘定科目の数字が低下することは、在庫を極力持たない経営ができているのではないかという見方もできるかと思いますが、本件においては、状況を踏まえると大口取引先による需要減(発注数量の減少)に伴う稼働率の低下によるものと推察できます。

P/Lの推移

棒グラフ上、小さくて見づらいですが、2018年3月期は原価割れになっています。売上よりも売上原価の方が大きいことを意味するのですが、上場企業で原価割れを起こしている企業を初めて見ました。

C/Fの推移

絶えず投資活動を行っていることを読み取れますが、フリーキャッシュフロー(便宜的に営業活動CF – 投資活動CFとしています)は常にマイナスですし、投資が必要な業界において、投資に回せる資金が著しく減少しているので、イノベーションを生み出す余力は残されていないと思います。

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